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2013年8月 6日 (火)

駒沢之陣を終えて。

今回の全国城郭研究者セミナーでは、2日目の8/4に「縄張・考古・文献―城郭研究の明日―」というテーマに沿って、
進化論的型式学に基づく縄張り分析を柱とする城郭研究を進める立場から報告しました。
1980年代以後、城郭遺跡の調査と史料的活用から当該機社会の様相を研究することを目指した縄張り研究では、
文献史学や歴史考古学等の隣接分野の研究に対して如何に向き合うかが問われます。

その事例として、2005年の「比企の城」シンポ以来、縄張り研究の年代観批判で
喧伝された「杉山城問題」を取り上げ、
これに関わった文献史学側、歴史考古学側、そして縄張り研究側のコメントと彼らが論拠とした年代観の根拠について
分析を行いました。その結果、この問題が問題ですらないこと、縄張り研究者の側では不用意に議論に参加したことを戒め、
このような年代観や城郭跡に関する視点で提示された論拠については、そのまま鵜呑みにせず、可能な限り、裏取りをした上で
議論しなくてはいけないことを指摘しました。

R0021558

今回のものは、以前から再三城郭研究者の間では指摘されていたこと。それを私が代表するような形で詳細に整理して報告したものです。
今までの流れを踏まえて、今回は杉山城跡の縄張り図も用いませんでした。もちろん、空間論や戦場論も安易に用いず、
淡々と文献史学と歴史考古学の側の手法で、丹念にこれまで提示されてきた論拠の再検証をしました。
そして、論拠には問題が多く、指摘された問題そのものが問題ですらなく、むしろ、問題にしたことが問題であったことを示しました。

さらに、シンポジウムの場を通して、「比企の城」シンポで掲げられた問題提起に関しては、
議論の途上にあった国産陶磁器の一編年案をひとり歩きさせて城郭遺跡の年代観の議論に
安直・無批判に用いられた結果にしか過ぎないこと、それ故、一連の批判は根拠の伴わないものであり、当初からそもそも問題ですらなかった、
このことを縄張り研究、歴史考古学の側の議論で確認されたことで、この「問題」は事実上終止符が打たれたと思います。

思えば、「比企の城」シンポに際して、これに関わった文献史学の側からは、
北条氏系の「山城の教科書」とまでいわれてきた、これまでの縄張論の見方とは、
その時代観の点で大きく対立するような、興味深い考古学的な特徴が明らかにされ始めている…
…長い伝統と蓄積を持つ縄張論(中世城郭論)の方法と、地下の発掘を主とする考古学の方法との、
かなり緊密な対話を要請するという、これまで余り試みられたことのない、
魅力的な研究討論(シンポジウム)の必要性を、強く感じさせてくれるものとなった。」

と、「地表面観察による縄張り調査」と「発掘による調査成果」間での議論を期待する声が寄せられていました。
今回、その緊密な対話を通して、この問題は問題ですらなかったことが確認することができました。

他方、これまで、国産陶磁器の一編年案について、絶対年代の根拠について何ら裏採りもせずに鵜呑みにし、
状況証拠として掲げた史料も単なる誤読に過ぎないにも関わらず、縄張り研究の不備を追及する大論陣を張られた側については、
今回、その根拠を失ったにも関わらず、誤読したことを煙に巻こうとした姿勢は到底容認されるものではありませんでした。
今後は、当日用意した事例も加えて「●●之陣以来」と続く場合の●●之陣の解釈については、隣接分野との緊密な対話を図りたいものです。

しかし、その一方で、残念ながら縄張り研究の側で問題でもないものを問題として取り上げた結果、少なからぬ混乱をもたらした
件については、
当日、自らの不手際から問い詰める機会を逃してしまいました。
結果、不十分な総括になり、外部に曲解する余地を与えると共に、城郭研究者の間に進化論的型式学に基づいた研究視点について
新たな議論を喚起する機会を用意できませんでした。
この点は何の言い訳も効かない不手際であり、大いに反省するところです。
これについては、今後の論点要旨等の機会を通して、当日用意していたコメントを以てきちんと総括を図ることで応えたいと思います。

 以上のように、今回のセミナーでは、前者については自分なりに十分やれたものの、問題にした側に対して自らの手で自らを総括する
ように、厳しく問い詰めることができなかった点はまだまだ甘いと痛感しました。
そうした機会を幾度か逃す甘さが、後半に全く以て言い訳の効かない不手際をしてしまうに至ったと反省する次第です。
今後、二度とこのような不手際を犯さぬよう議論の場では甘さを排除し判断を誤らぬよう、教訓と戒めにしたいと思います。
そのためにも、今以上に、現実の場での学びと訓練を重んじ、日々実践の場に即応できる力を身体に根付かせる努力を忘れぬよう、
今回の件を教訓に、いちから城郭研究をじっくりと勉強し、他日に期したいと思います。

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