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2012年2月26日 (日)

講演会でない研究集会の重要さ。

私が在職していた頃、「近世の山城」というタイトルで全国城郭研究者セミナーを誘致しようと目論んだことがあります。
全国の城郭研究者や関係者に竹田に来ていただき、豊後岡城を中心に議論を開きたいと思ったからです。
城郭跡としては著名な割には、「調査事例」としては研究者の間で共有されていない状況をなんとかしたかったからです。
遺跡の調査成果から研究報告や論文などの公開、研究集会での報告といった研究上の交流を
積極的に展開しない限り、
知られていないのと同じだからです。
もちろん、セミナーを開くのは、これまでの自分が積み上げてきたネットワークや実力が試される機会なのですが、
多くの研究者を呼び集めることのできる研究集会は、講演会を何度も開くよりも遙かに対外的効果が見込めます。

また、セミナーのレジュメは有償頒布されるし、大会成果は翌年の『中世城郭研究』に掲載されるチャンスでした。
さらに、初の九州開催での全国城郭研究者セミナー、皆さんが九州の城郭を観るチャンスとして来てくれるという期待がありました。
会を開くことで、200名近い城郭史・歴史考古学・歴史学などの城郭研究者が集まる機会。
内には城郭研究とはどういうものかを、外には特徴ある縄張りを持つ近世山城、豊後岡城を全国の研究動向に印象づけるチャンスでした。

しかしながら、タイミングが合わない中、ようやく具体化しようとした頃には、
私の環境はそうしたものを受入れる状況にありませんでした。
そのため、2010年セミナーは泣く泣く関西の城郭談話会にお願いすることにしました。
嫌な予感はあたり、姫路大会が開かれる年には私は肩書きのないひとりの研究報告者として別の報告をすることになった次第です。

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一方で、そうした研究集会の重要性を証明するかのように、世界遺産を目指していた平泉町では2010年に町の八重樫忠郎氏が事務局を担い、
長年「学際的研究集会」を開いてきた著名な研究会である、中世都市研究会の平泉大会の開催を実現しています。
全国の中世都市研究の中に、平泉をどう位置づけるかを内外から確認しあう場となったようです。
その研究大会の成果は、2011年に刊行された『中世都市研究、都市のかたち—権力と領域—』で研究者に広く手渡っています。
ちなみに、この中世都市研究会は第9回大会(2001年)に大友府内遺跡を持つ大分市で開催されたことのある研究会です。
その際は、私も参加者としてフロアにて勉強させていただいたものです。

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このように、専門職に係わる人々ならば、自分の持ち分から成果を導き各地の研究会に積極的に参加し報告を重ねる中で
研究者同士のネットワークを築き、自分の所属元と全国の研究者ネットワークをつなぐことが求められます。
事業のためのネットワーク以上に、学術的なネットワークを築くことで、
自分の担当する遺跡が知られると共に、多くの研究者から関心をもっていただき、様々な見識に触れることができます。
それは限られたひとたちの中で議論することよりも遙かに有意義なものです。そうした知見を地元に還元する役割が求められるのです。

私のウェブログを見ていただいている方にはわかると思いますが、
中・近世遺跡については、歴史考古学・文献史学・歴史地理学・城郭史・建築史など様々なジャンルの人たちが
関係する幅広いネットワークがあります。
残念ながら、我がすまいの近くに近世初頭の城郭遺跡を持ちながら、その史料的位置づけを伝えることができていない憾みがあります。
それ故に、上記の責務を少しでも果たすべく、これまでに積み上げてきた「豊後岡城とその周辺の遺跡」など初期岡藩の関連遺跡について、
限られた条件下の現地調査とさらに限られた文献調査による研究を重ねてきました。

本年は、それらの成果をまとまった形として世に問う機会と考えている次第です。
もちろん、今の私は専門職的な環境・身分にはありませんので、民間学の立場からそれなりの手段を講じてベストを尽くしたいと思っています。

その一方で、今年は節目の年にあたるコチラに籍のある「専門職」な方には、私よりも遙かに恵まれた環境で専門的業務に従事されているのですから、
単に事業関係者を呼んでの講演会型セミナーではない、高い専門性の研究集会をどんどん企画・実践してほしいと願う次第。
その実現のためにも、担当者自らが研究報告者として積極的に中・近世移行期の学際研究ネットワークに参画し、
これまでの調査成果を全国の研究者に積極的に公表し門戸を開かれることを切に要望する次第です。
そうすることで、いずれ、この著名な城郭遺跡について研究者に認知されるような研究集会を誘致するネットワークと環境が整うと思います。

私自身、長年城郭研究絡みで研究会に参加する中で、重要な中・近世移行期の遺跡を担当された方々にお会いしてきました。。
そうした方々は、何年も係わってきた調査整備事業の成果を研究集会の報告などで発表され世に問われています。私も多くの学びを得てきました。
私の寓居の上にある近世城郭も、その歴史的価値が故に、中・近世移行期を対象とする多くの研究者が現場からの成果報告を待っていることに
もっと敏感になってほしいものです。

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