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2011年8月 9日 (火)

城郭跡整備と文献調査。

たまたま目に付いた佐賀城天守跡調査のニュースは、城郭跡整備に絡む方々の思惑が透けて見える良記事でした。
佐賀城天守台跡、本格調査へ 9月スタート 

で、つぶやく。
既に縄張り研究の成果がある佐賀城跡の調査で「……委員は「文献調査ができなければ現地調査が生きてこない」だとか。
@sengoku_walker: 【ニュース】
佐賀城天守台跡、本格調査へ 9月スタート
↓  ※佐賀城跡の天守を含めた縄張りの評価と初期佐賀藩に対する位置づけについては、
↓   木島孝之氏の『城郭の縄張り構造と大名権力』(九州大学出版会、2001年)という成果が既に提出されている。

「文献調査ができなければ現地調査が生きてこない」と、「文献の解析については、職員配置が未整備と指摘。」というのは
城跡にかこつけて文献調査やりたいと言う歴史屋さんの意欲を現したもの。

↓  ※城跡調査にかこつけて古文書調査による藩政研究に繋げたいという思惑がみえてきます。

城郭跡の調査→気がつけば藩政資料集が成果品、というのは整備事業のお金で文書調査がしたい文献屋の悪い癖。
「ひとり学際」な城郭研究では、縄張りを押えた上で発掘調査の成果を消化し自分らから文献調査もするもの。


と、たまたまストレートに記した記事があったのを採り上げて、
なぜ全国の「●●城博物館」に城そのものの解説が乏しいか、文献史学の人ばかりが配置されるのかの一端をご案内。


城跡整備は縄張り調査による全体の把握があった上で、発掘するポイントを設定して調査し、
その成果をもとに文献史料で補完するが筋道。縄張り調査と発掘調査の両輪があれば十分なのに、
なぜ文献調査が「我々が裏付ける」と表に出たがるのだろう。


縄張り理解を抜きにした現状の城郭跡整備の問題点については、2011年年頭に発表させていただいた拙稿にて事例をあげて論じています。
これまでの城郭跡を巡る学際的研究は、城や文化財に詳しいとされる一部の文献史学者が最新の発掘調査に「文献による裏付け」を与えることで埋文行政の音頭取りしてきたもの。
最初こそは史跡破壊を止める保存活動の手法として機能しましたが、次第に一部の文化財に近い文献史学者による方便に変化していきました。
特に、城郭跡の整備は一般人の関心も高く、遺跡自体が様々な出来事の舞台になったために様々な文献史料を何でも絡めることができる。
そのため、限られた調査事業予算の中でも、様々なジャンルに効果的に調査費が引き出せる魅力ある「成長分野」として重宝されました。

本来なら文献調査は既存の史料編纂事業でやればよいもの。城跡調査に割りこんで文献調査枠を作ろうとする行為はお門違いというものです。
その割を食って、城郭跡を資料として扱う学際的研究を進める縄張り屋さんは、無償の現地調査者か「文献史学の問いかけ」に応えるパネラーの末席をいただくしかありませんでした。
そうした図式のたどり着いた先が、杉山城問題とされる「文献丸呑みの廃城年代から組み立てた年代観を基礎とした遺物編年案」による発掘成果を、
文献の人が鵜呑みにしたまま、さらなる文献の裏付けがあったと言って「城郭跡の年代観を問い直す問題提起!」と叫び聴衆を集めた一連の大騒ぎでした。
その時も、縄張り研究者はいつものように「文献史学の問いかけ」に応えるパネラーとして出向いたら、問題提起の「見せ物」にされたのは記憶に新しいところ。


「最新の発掘成果に文献による裏付けを加えた……」
「文献調査ができなければ現地調査が生きてこない……」
こういうセリフを公然とするような一部の文献史学者の振舞いに対して、
文献史料等を状況証拠として消化した上で遺跡やモノの史料的活用から得られた知見で結論を出す真の学際的研究を目指す城郭研究者は、
縄張り理解を踏まえて城郭跡を取り扱って下さる歴史学・考古学研究者と連携し、文献ありきで進められてきた城郭跡整備の問題点を示す時期にあると思います。

これまでの城郭跡整備を再検証し、「城郭跡を地域史と在地構造分析の史料として活用する」姿勢で、遺跡から文献史料を裏付ける視点を養い、
「文献は状況証拠であっても城郭遺跡の裏付けにはならない」「縄張り調査・分析のない城跡整備は不十分」という当たり前の視点が共有されるように、
縄張り理解のある歴史学・埋蔵文化財の現場の方々と同じ現場の者としてしっかりと議論を重ね、城郭跡からみた文化財学の構築に取り組まねばとあらためて思うところです。

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城郭跡整備と文献調査。を参照しているブログ:

コメント

調査の狙いがよくわかりませんな。

穿った見方をすると、天守再建のための準備と見られる可能性もありますな。

まったくもって。
文献調査を持ち込む方が絡むと、どんどん城郭跡から離れていきます。
落とし所は「歴史的まちづくり戦略」かもしれません。

これとは別に、石垣の修理カルテをつくる事業から古文書調査をやりたい人たちが前面にしゃしゃり出て、
CG作成事業の成果が分厚い古文書史料集になったというオソロシイ事例も身近で知ってます。

困ったものです。

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