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2006年4月19日 (水)

「今日の芸術」と「日本の伝統」

Taro1 Taro2 大分と岡山を往復する間に読んだのが岡本太郎の著書『今日の芸術』と『日本の伝統』。前者は光文社知恵の森文庫から出ているのを買って、後者はみすず書房の「岡本太郎の本2」を島根県立美術館で買った。2005年に光文社知恵の森文庫から出ているようなのだが、みすず書房の方は3000円するけど「芸術風土記〜日本再発見〜」の内の岩手と出雲(何と言う奇縁!)がついてていいかもしれない。実際は岡本太郎の本全5冊をそろえてみるといいかもしれない(在庫僅少)。

読んでみて思うのは、『今日の芸術』と『日本の伝統』は対で読まねばならないということ。そして、一見アジテーション的な文章で「芸術的」なカウンターパンチを食らわせるようにみえて、実際は、掴み所のない近代的産物である今日の日本について、如何に現在の我々が対峙しぶつかるための思考と方法論を、彼が体得し続けた様々な学問分野を駆使して提示する実に知性的で理論的な書物であるということ。そのくせ読んでいるとワクワクさせるのだから厄介だ。読むたびに「なるほどそういう視点があったなぁ。」とワクワクする一方で、彼の思考・論理展開を支える豊かな学問領域はとても参考になったし学ぶところが大きかった。

岡本太郎は芸術家・アーティストとしての側面が強く情熱的で情念的でエキセントリックな印象が人々にガツンとした魅力を与えているように映るけど、本当はおそろしくモダニズムの洗礼を受けた学者であり理論家だと思う。わたしは亡くなった時にやっていた回顧展をみるために博多から広島まで鈍行で行ったこともあって、岡本太郎の作品が大好き。でも、そのワクワク感は間違いなく彼の豊かな教養と総合的知識人・理論家としての態度から感じるものだと思っている。
哲学・歴史学・民族学などの概念を援用するのではなく、パリ大学で体得した哲学・社会学・民族学の理論をもとに切り込むからこその切れ味。彼の論の是非も含めて彼の採った思考・方法論、彼を支えた学術的基盤、そしてそれが実践された芸術表現といった連環はきちんと押えなければならないしこの総合性を学ぶべきだと思う。
おそらく、美学・美術史や美術評論でたくさんのタロウ像が出されるだろうけれども、学術的基盤を正面から捉えないとアーティストとしての特異性や残された言動ばかりが強調されて、「岡本太郎」教の信者になるのがオチな気がする。死んだタロウに救いを求めて「元気をもらった」としても何の慰めにもならない。

以前は前者しか文庫本でなかったので、「学術本」然とした後者をわざわざ3000円も払って買う人は少なかったと思うので、案外前者のアジテーションな部分に幻惑されるアーティストな人が多々あったような気がするのだけれども、後者も文庫本になったので合わせて読むといいと思います。
日本や日本の美術、今日のあり方について哲学・社会学・民族学などの総合的な学問領域でぶつかり、読み解こうとした人っておそらく岡本太郎以外にいないような気がする。それだけに重要な古典と思います。

伝統ついでに、芸術風土記の出雲を読んであらためて思ったのが国引き神話。新羅や「北門」越の国から引っ張ってきて現在の島根半島ができたそうな。古代の出雲人は日本海の向こうまで広がる世界観を持つ視野の広さとおおらかさを持っていたことを示す証左だ。
そう思うと、今の近代的日本国の枠組みの中で「地方」を演じる島根人の扇情的な竹島問題の扱いをみるにつけ、相手があることとは言えその近代的矮小さは古代出雲人が見たら嘆くことだろう。日露戦争前後の軍事的視点から切断された日本海を扇情的対立やうわべだけのポーズで切断したままに放置するのではなく、
出雲神話にみる世界観を以て正面から取り組み修復するかがこちらからのアプローチだと思うのだが。日本海を舞台に彼岸の地域を視野に入れて俯瞰する生き生きとしたおおらかさをもって近代的切断に対しデタントすることこそ、「地方」から地域への脱皮と思うのだが、そうでなければ、いつまで経っても近代的な中央にとって都合の良い山陰の田舎でしかないだろう(アジアの玄関とか言って喜ぶくせに「アジア貿易特区」な発想すら持てない周縁部的九州人とも通じるな)
そうした観点で語る人がいないのが、成程岡本太郎の言う「日本の伝統」の現状を教えてくれる。

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