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2005年7月15日 (金)

チャングムから学芸の話まで


left_menu_titleimg01ヘルペスで安静を申し付けられたので仕方なく、夜は何もせずにBSでアンコールしてた
「大長今(邦題「チャングムの誓い」)」という韓国ドラマしていたので無音声(音声が壊れてるため)で観た。
このドラマ、うちの事務のおねーさま方がみーんな注目しているとのことで、ちょっと前に後半編スタート用のガイドブックもみせてもらってたヤツなんだけど、何せ時代が朝鮮王朝中期の
第9 代王成宗(在位1469〜1494)と異母兄弟の燕山君(在位1494〜1506)と中宗(在位1506〜1544)という、対外交流史をウリとする九州史学在籍の中世史研究者としては看過できない時代ですので、観てみたわけですよ。その朝鮮王朝実録に載っている実在の女 医長今(チャングム)を主人公とした宮廷ドラマだそうな。といっても長今は実録にチョロっとしかでないので有名な歴史上の人物というわけでもないみたい。

予備知識もまるでないのであるけど、ファーストインプレッションは大河ドラマと朝の連続ドラマ(+東海テレビの昼からドラマを加味。)がうまく融合した感じ の韓国ドラマだなぁという感じ。いやぁ、歴史上の有名人を出して空振り続ける大河ドラマと似たようなおねーさんの人生ドラマでマンネリ化しつつある朝の連 続ドラマの反面教師と違うか?と思うくらい要点を抑えたドラマ(とりあえず、こちらのテレビブログ『大長今ストーリーガイド』が参考になる)。

アンコール放送でみた回などの前半の料理人編というのは全くのフィクションらしいのだが、 料理→医学へ向かわせることで往時の食文化と医学を再現してみせる、という学芸的にも興味深い構成。考証は朝鮮王朝実録がベースだろうが、わからないとこ ろやドラマの演出上ある程度アレンジしてるものと思われる。日本と違い、王朝がきちんと記録を録るのでこうした生活文化の考証はやりやすい。(追記:公式ページみてみたら同時代の具体的記述が乏しく難しいらしい。生活誌復元はこの辺が難しい。それで、王朝はあんまり様式を変えないという前提で考証してるよう。)

物語としては、ほとんど記録のない人物を 主人公にすることで自由に構成が可能となるメリットも見逃せない。うまいよねー。ドラマ仕立ては韓国ドラマらしい軽さと重さがうまくマッチしていて観る方 を飽きさせないし感情移入もしやすい。フィクションな人物を中心に物語を進めるので自由なシナリオが組めるのだろうか観ていて面白い。去年の三谷幸喜脚本の「新撰組!」もフィクションを絡めてこういうテイストでしたかったんだろうなとも思う。
日本で置き換えるならば、おあむから観た「おんな太閤記」とか、宮廷女官からみた「栄花物語」とかいう感じになるのだが、朝鮮王朝のような王朝システムがなかった日本では、大奥でもこうは作れないので、アアやられた!(+_+)という感じですね。

この時代は、日本の室町幕府や大内氏などが朝鮮貿易船を派遣し、対馬が窓口となり博多などが貿易港として栄え、商人や禅僧が活躍する時代です。対外交流史ではこの時期の朝鮮王朝実録をよく引用するんですよ。なもので、成宗や中宗はなじみ深い(;゚∀゚)オイオイ? まもなく開館の九州国立博物館や、九州大学文学部の朝鮮史学研究室と日本史(中世)研究室が観たら泣いて喜びそうなドラマなんですよ、「チャングム」は。わたしが国博や九大に居たら、迷わずNHKと韓国MBCに談判して「チャングムと朝鮮宮廷文化」で展示とシンポとセミナーとツアーを組むけどね(ノ´∀`*)テヘッ。
日韓中の「オジサン・オバサンの大文字物語」に代表されるイデオローグやプロパガンダとしての歴史(おおよそ20世紀の歴史学ですな)の余韻が未ださめやらぬ状況なのですが(。・ω・)(・ω・。)、歴史学の現在としては、
宮廷文化や生活誌などの比較的身近な歴史的事象から当時の人々を知り、さらに大文字の歴史的事象へ誘うという、教養としての歴史学の面白さを伝える方法論を如何に鍛えるかが課題なので、こうしたドラマで仕掛けてきたムーブメントを博物館的にもしっかり受け止めてやらねばならないテーマなんですよ。
日本と韓国が違いを意識するのは朝鮮出兵時以降なので、その前の比較的緩めのこの時代はかなり面白い発見ができること請け合いですよ。それをしてこそ、はじめてアジアの玄関たる国立大学と国立博物館じゃないですかね。

と、ヘルペスを患いながらチャングムを観てみたのでありますよ(笑)。
うちでやろうかな?パネル展示くらいさせてくれそうなものだが。

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